コミュニケーション学見地から分析

ようやくアメリカの大統領が変わりそうです。

ジョー・バイデンが新しい大統領となりそうです。

はっきり言えないのがもどかしいですが、トランプが未だなお大統領の席にしがみついているため、厳密にはまだ決定ではありません。

ただ、得票数ではバイデンが上回ったのですから、勝利のスピーチをしました。

いい話でした。

 

で、それがなぜよかったかということをコミュニケーション学的に分析します。

まず、人の心を動かすために訴えるべき三つの要素があります。

それはエトス、ロゴス、パトスという三点です。

エトスとは人柄が分かる話です。ロゴスは論理、パトスは感情です。

今回のスピーチはエトスに訴える力が際立っていましたが、ここで大事なのは、エトスとは肩書きではないという点です。

その人の学歴や出身大学、所属、地位などの先入観から信頼性の有無を決めつけがちですが、そうではないのですね。

あの職業だから賢そうだとか思っていても、逆に不勉強なところがあれば信頼性は倍速で低下します。

話ににじみ出てくる人柄からその人の信頼性が作り出されます。

バイデンの今回のスピーチはここが良かった!

「分断されたアメリカを修復する時間」だとか「アメリカ人は一つになるべきだからトランプさえも認める。なぜなら彼もアメリカ人だから」という表現などは器の大きさを示しています。

事故で亡くした前の奥さんと娘、脳腫瘍で亡くした息子、そして今の家族の両親もおじいさんの話も。

以前、自分のおじいさんに言われた教えとは…

英語で “keep the faith” というと信念を貫くとうことで「信じる」という意味ですが、自分のことだけにとどまるのではなく”spread the faith”(広げる)と習ったとのこと。

これらのエピソードが彼の優しさや温かさを伝えています。

「自分は温かい人間だ!」と言わなくても伝わるんですね。

混とんと分断が支配している今のアメリカに響く話でした。

公開討論会で見せたトランプの醜態と正反対の姿を見せようとしたのが伝わります。

当然、事前に準備してするのですが、見事に話し切り、素晴らしいスピーチになりました。

コミュニケーション学の起源

コミュニケーション学は古代ギリシャ時代に遡ります。

アリストテレスが説いたレトリックという学問が軸となっています。

レトリックは日本では「言葉のまやかし」のように使われることもありますが、それは本来の姿ではありません。

頭の中で考えるところから始まります。

どう考え、どんな順序で話し、どんな言葉にし(この部分が日本では強調されすぎ)、それを覚え、実際に披露するか、という一連

の流れを言います。

だから結果的に出来上がるのは日本で言うプレゼンテーションなのです。

信頼性と人柄があなたの話から醸し出されてくると、周りにはいつの間にかみんな集まってきます。

 

ビジネスでも欠かすことのできない、人を引き付けるスキルです。

営業成績がいい人に共通するのもこうした部分。

だって人間の生活はコミュニケーションを中心に回っているのですから。