意味が分からなかった瞬間

まだグーグルマップやナビなどがなかった

数十年前の話。

 

私は友人の家に遊びに行こうとしていま

した。

 

彼の家はそこまで離れてはいません

でしたが、初めてお邪魔するため、事前に

場所を確認しようとして電話をしました。

 

彼は最寄りの駅からの行き方を教えてくれ

ました。

 

こんな風に…

 

「駅から東のほうに向かってまっすぐ

行くと、3つ目の信号が1つ目の信号だから

そこを右に曲がって」

 

むむっ?

 

意味が分からない。

 

もう一度説明してくれるよう求めました。

 

「いや、だから!駅から3つ目の信号が

1つ目の信号だからそこを…」

 

彼の頭の構造を見てみたいと思いましたが、

念のため彼の「1つ目の信号」の定義を

聞いてみました。

 

すると、彼は赤か黄色のランプが一つしか

ついていない点滅信号のことを1つ目の信号

と呼んでいることが分かりました。

 

一つ目小僧と同じ発想ですね。

 

ずっとそれで正しいと思い込んでいたため、

文の矛盾に気づかなかったそうです。

 

こんな笑い話は後にも先にもこれだけ

ですが、一般の人たちも得てして同様の

間違いをしています。

 

日本人は「こと」とか「もの」を文の中に

多用します。

 

書いてみたら分かります。

 

「私が好きなことは食べることと寝ること

です。これからもここで教わることを

しっかり身に着けたいと思います」

 

などど自己紹介するなかで何度「こと」を

言っているかに本人は気付いていません。

 

私が添削する際には、「こと」がたくさん

出てくるこうした文章をシチューと

呼んでいます。

 

コトコト三昼夜煮たら美味しいのができそう

だからです。

 

私の仕事はこうした原稿添削が占める割合が

多いです。

 

でも楽しいんですよ。

 

各受講生が思いの丈をぶつけた原稿が提出の

度に上達する過程が楽しいのです。

 

全員の原稿を読んで正しい日本語にするの

には、何とも言えない満足があります。

 

全員と会話している気がするからです。

 

原稿は二人三脚で書きます。

 

指摘されて初めて分かる、論理的矛盾が

あります。

 

限られた語彙しか使っていないことも、

誰かが言われないとなかなか気づきません。

 

客観的な見方が思い込みを解消してくれる

のです。

 

だからCSAのプレゼンテーション講座を

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