説明上手になるだけじゃない
11月26日に私が東京で行う「成約率をあと1割伸ばすコミュニケーション術」は洗練された言葉の重要性だけでなく、対人コミュニケーションの説得に焦点を当て、思わず相手がこちらの求める答え、つまり「分かりました、買いましょう」を引き出す秘密を教えます。
今日はその背景についてお話します。
コミュニケーション学に魅了され続けて30年
私はコミュニケーション学者です。
30年前にこの学問に出会って以来、人間のコミュニケーションが持つ不思議と不可解さに魅了されています。
アメリカの大学でこんな興味深い対象が授業として提供されていることに驚きました。
そこから、始まったこの興味ですが、日本と全く捉え方が違う点がいくつもあります。
例えば、アメリカは全てエビデンスを基に学問を修めます。
最近でさえ日本は猫も杓子も「実証実験」を繰り返すようになりました。
でも、実証実験の手法も確立されていないのにそう訴えている人たちの多く見ます。
それはプレゼンテーションの本質を学ばないまま、ステージで見よう見まねで人前で話す日本人プレゼンターと同じ姿です。
日本では話し方はおろか、書き方も体系的に(何なら今も)まとめられておらず、教員の個人的な経験を基に教えています。
だから私はアメリカで書き方講座を学んだ時に衝撃を受けたのです。
この書き方講座は、アメリカの主要な大学には必ず併設されている語学クラス(ESL)の一つです。
私が通ったカンザス大学では、現在①読み/書きクラス、②聞き取りクラス、そして③文法/コミュニケーションのクラスに分かれていますが、昔は①が二つに分かれていました。
ここで言うコミュニケーションのクラスはコミュニケーション学ではなく、まともに会話できるか英語を学びます。
日本語で書くと鈍くさいですが、①reading & writing, ②listening, ③grammar & communication と書くとなんだか印象が変わるから不思議。
私は初めの学期でこの中の writing class のレベル5を受講し、あとはカンザス大学の通常クラスを受講したのですが、その時に論理的に、かつ修辞的に書く必要性を叩き込まれました。
ただ、英語の修辞は極めて難しい。
論理的に書くことは writing class で学んだだけである程度理解できましたが、言葉の巧みに使いこなす書き方は英語を外国語として学ぶものとしてはとてつもなく高い壁でした。
日本人とは違い、英語を話す人たちは、独自性を求めます。
手垢のついてない表現を好みます。
これができなければ高いレベルで話せるわけがない。
なぜなら言葉の並びは書こうと話そうと同じだからです。
教科書も教員もシステマティックに理解する手伝いをしてくれます。
全てがデータに則っています。
その頃から、いえ何百年前からも欧米はデータに基づいた考え方を行っているのです。
それが言葉だけではありません。
形がないように思える対人コミュニケーションでも同じなのです。
相手を説得するためには、何をしたらいいのかを研究し、いくつもの理論が提唱されています。
言葉やコミュニケーションを、統計学を用いて、客観的データを集め、そこから思い込みを排除し、再現性のある思考を組み立てるのです。
何となく、曖昧に、が特徴の日本文化と対照的な合理性でした。
今ごろになって日本は論理的思考やら実証実験をやたらと主張するようになりましたが、これらは私以外にも海外に行って刺激を受けてきた人たちが、一定数に達したことを表します。
私の個人的な考えではなく、実証された理論でコミュニケーションを考えてみませんか?
私のやり方が「いや日本ではそんなこと言っても通じないよ」と思える人には響かないでしょう。
そんな人たちは、周りの大多数が変わってようやく変わろうとしますが、その頃には置いていかれます。
そして自分の成績が上がらないと嘆いて、賢い人を羨ましがります。
それではいつまで経ってもトップにはなれず、生活は豊かになりません。
人生の時間は限られています。
【筆者紹介】
野中アンディ
(一般社団法人 コミュニケーションスキル協会 代表理事)