インタビュー対応とは
7月31日(土)、私は将来を嘱望されるアスリートの卵たちに言葉の面白さと秘密を教えてきました。
10年ほど前から始まった、福岡県タレント発掘事業は身体能力が高い子供達に多くのスポーツを体験させ、自分の才能を開花させるプロジェクトです。
そして運動だけではなく、知的な学びも提供しています。
私が担当しているのは、インタビュー対応での論理的で修辞的な受け答えです。
今回担当したのは小学5-6年生です。
インタビューとはパブリックスピーキングに他なりません。
この時期はタイミングが完璧でして、今まさにオリンピック真っただ中でインタビューを見る機会が多いため、彼らも自分のこととして真剣に聞き入っていました。
才能のあるアスリートは成績を残せば残すほど注目され、インタビューを受ける頻度は高くなります。
当然、彼らはそうなることを望んでいます。
今回は知的に話すための①話のリズム、②抽象名詞、そして③インタビューの際のNGワード、について説明しました。
まず、話のリズムとは、文の長さです。
アスリートに限らず、最近は「~なんで、~なんで、~なんで、はい」で終える人が多いですね。
「~なんで」は理由を述べる条件節ですので、文としては未完成です。
理由を言い続けているのですねぇ。
「です・ます」で断定すると小気味いいリズムが出るだけでなく、自信と発言に対する責任感が伝わります。
次に、抽象名詞を使うと賢い話ができるようになります。
「ご飯を食べることが大好きなんで、いろんなお店に行くことができて、たくさんの友達と一緒にご飯を食べている時が一番幸せです」
という幼い表現が以下のように変わります。
「食べ歩きが趣味ですから、異なる店を比較や友人たちとの会食のいずれも幸せな時間です。」
ほら!賢そうでしょ?
動きの見える具象度の高い表現を、抽象度を上げて目に見えない名詞にするとデジタルの明瞭さが出てくるのです。
なぜならそれぞれの単語が指し示す意味の対象が明確になるからです。
具体的な動きが見えると映像化は簡単ですが、どう想像するかはその人次第です。
一方、概念的な説明は映像にする必要がありませんので均一な理解が可能になります。
日本には抽象的な表現は悪だという誤った理解が浸透していますが、これは脳機能の放棄と言ってもいいです。
このままでは言葉遊びを忘れた悲しい民族へ一直線です。
言葉を作り出す楽しさがありません。
だから「アンディさん、英語を教えてください。何でもいい、って英語でなんて言えばいいんですか?」という質問をこれまで多くの人に訊かれました。
発想が日本語です。
「何でもいい」とか「どれでもいい」って表現は英語でもありますが、その後周りの人たちから「意見がなくて面白くない奴」という烙印を押されます。
ありきたりの表現では国際的なインタビューでは相手にされないのですね。
タレント発掘事業に参加している子供たちは、スポンジのように吸収が速く、講座の後半では受け応えの言葉があっという間に変わりました。
自分の思いを抽象度を上げて話すことができました。
例えば、彼らの言葉はこう変わりました。
「積み重ねた厳しい練習の結果、この記録を出せて満足しています。」
「応援してくださった皆さんのスポーツへの情熱と気持ちが伝わりました。同時に努力のおかげでみんなで勝利を勝ち取ることができました。」
そこらへんのプロスポーツ選手よりも立派に話せています。
最後に、インタビューで使うべきでないNGワードをたくさん伝えてきました。
最近の日本人がやたらと使う表現は使えば使うほど軽くなります。
「普通に、素直に、正直、やばい、やっぱ、ぶっちゃけ」などなど。
他にたくさん使うべきでない表現があります。
使えば使うほど頭が悪く聞こえるからです。
スケートボードの解説者が今注目されていますが、あれは私が言っている内容と正反対でして、大衆に対する迎合に過ぎません。
言葉の専門家として、彼をチヤホヤする日本社会に成熟さを促す責任を感じます。
今回出会った若者たちはスポーツにおいて超一流を目指すのですが、現実的な話をすれば、彼らはどこかで挫折するかもしれません。
若いころプロゴルファーを目指していた私も怪我をしたらどうしようかという不安を常に抱えていました。
ゴルフばっかりやってても、俗に言う「潰しが効かない」のではないかという不安です。
でも、ちゃんと話せたら解説者でもスポーツ評論家にも指導者にもなれるのです。
スポーツを趣味として一般企業で働くこともできるのです。
だから賢く話す術は必要なんです。
担当の方からは「これをシリーズ化させたい、できれば違う世代にも広げたい」と高評価を頂きました。
私も頑張ってこの活動を全国に広げたいですね。
日本のインタビュー対応を世界基準にするために。