自民党総裁候補者のスピーチスキルを採点

9月17日に自民党総裁選が告示され、各候補者が演説を行ったのですが、私の採点が18日の毎日新聞朝刊社会面に掲載されました。

オンラインでも読むことができます。

https://mainichi.jp/articles/20210918/ddm/041/010/059000c

↑毎日新聞ホームページより引用

有料記事ですので、最後まで読みたい方は、ぜひこれを機に毎日新聞をご購読ください!

当日にお知らせしたら良かったのですが、なんかバタバタしていましてご報告が今日になってしまいました。

全国で読める社会面ですので、私を選んでいただけて嬉しいですねぇ!

実は先週初めにこのお話を記者さんから頂いていましたので、金曜日の演説をどう分析し、採点しようかと数日考えていました。

コミュニケーション学者として、いかに他の人とは違った視点で彼らの話を見れるか、が社会に対する私の貢献だと思ったからです。

だから普通のコメンテーターが言うような「言葉に力があった」とか「あれじゃダメだ」といった表面的な話はしたくありませんでした。

というわけで、ここはやはり2400年前から続くレトリックの視点で見ようと決めました。

アリストテレスが説いた、人を説得する際に訴えるエトス、ロゴス、パトスで4人の候補者を眺めるなら、これまでとは違う説明ができます。

レトリックの視点

エトスとは信頼性や人柄が感じられる言葉です。

エトスはにじみ出てくるのが特徴です。

だからいくら自分が「こんな資格があります!」と掲げてもダメなんですね。

「英検1級持っています」って言っている人が英語を話せなければ信頼性ガタ落ちです。(まぁよくある話です)

でも、資格を言わなくても英語を話せる人はそれだけで英語に関する信頼は上がります。(他の信頼性は知りませんが)

ロゴスは論理を指します。

論理とは相手が分かりやすいように構成し、整理されている話し方です。

話題がいっぱいあってそれぞれが交じり合っていると、ダラダラ話されまとまりがなくなります。

論理とは、話題がそれぞれ独立しており、順番がきれいに配置された話し方です。

でないと、いくらいいメッセージであっても相手は分からないのですね。

まとまりのない話を聞かされるのも疲れるものです。

 

最後のパトスは感情を意味します。

この感情は話し手の感情移入ではありません。

聞き手の心の中に生じさせるよう、言葉を紡ぎます。

ここが大切!

可哀そう、喜び、怒り、同情、反省、など、聞いている人の中に感情が湧き出てくると、行動に移してくれるため、それを利用するのです。

 

加えて、当日どう振舞っていたかも注目していました。

準備をしていたら話す内容は頭に入っているはず。

でも日本人は公の場で原稿を読む人が多い。

だから原稿を読まないで言葉に力がある人が際立つのです。

候補者の姿勢

河野さんはずっと聴衆を見ていましたが、形だけなのが伝わりました。

高市さんは前半で原稿に目を落とす場面があったのですが、アウトラインを確認する程度でしたのでオッケーでした。

ただ、「また」が口癖のようで、ずっと追加されている気がするのですね。

でも彼女の演説が最も話の構成が良かった。

岸田さんと野田さんは準備不足でした。

 

原稿を読んでいる段階でもうパブリックスピーキングの体をなしていません。

私は自民党員ではありませんで選ぶ権利もありませんし、この4人とは何ら面識もありませんので、自由に採点しました(笑)

世の中にコミュニケーション学の存在と有用性を広めることができましたので、私に白羽の矢を立ててくださった記者さんに心から感謝いたします。

この場を借りて御礼申し上げます。