人を動かすために

パブリックスピーキングの目的は大きく分けて二つです。

まずは情報伝達です。

聞いた人が満足する内容を分かりやすく話すことができたら成功です。

 

もう一つは説得です。

聞き手が理解し、納得し、行動を変えるところまで行けば成功です。

実は人間の生活は説得の繰り返しです。

面接、商談、プロポーズなど、相手の意見と行動を変えるコミュニケーションだらけなのです。

 

そのため、コミュニケーション学には説得のための理論がたくさん見出されました。

数ある説得の理論から、今回は選挙で戦うための承諾獲得理論を紹介します。

 

マーウェルとシュミットという二人によって1967年に提唱されたこの理論は、相手を動かす、つまり「分かりました。やりましょう」の言葉を引きだすための16の戦略を説明しています。

16種類のどれか、またはいくつかを利用したら相手が自分の思うように行動してくれやすくなるのですね。

人が動くためなら何をやってもいいわけではありませんが、人が動くメカニズムを上手く説明しています。

それが以下の16個です。

 

1.賞/褒美の約束
  「今契約したら2割引きにします」

2.罰/脅かし
  「金を出せ。さもないと…」

3.正の専門的助言
  「今の契約でしたら、弊社の割引が適用されます」

4.負の専門的助言
  「今の契約でなければ、弊社の割引は明日から適用されなくなります」

5.友好的態度
  「こんにちは。いい表情していますね。少し話しませんか?」

6.事前の賞の付与
  「先にこのお小遣いをあげるから、牛乳買ってきて」

7.以前の貸しの指摘
  「これだけ皆さんのために貢献してきたつもりです。だから今回はよろしくお願いします」

8.継続的な罰の付与
  「宿題終わらせないとご飯抜きで、小遣いもなしで、遊びにも行けずに、家から外に出さないからね!」

9.道徳観
  「今決めるのが正しいのです。遅くなったらその分社会の立ち直りが遅れます」

10.いい気分にさせる
  「こんな社会が手に入るのであれば、快適だと思いませんか?」

11.悪い気分にさせる
  「こんな社会を手に入れられないのであれば、今後ずっと後悔し続けますよ」

12.正の役割関係の強調
  「賢い人たちだけがこの点に気づいています」

13.負の役割関係の強調
  「世間の変化に疎い人だけがこの点に気づいていません」

14.相手の親切心の利用
  「見てください。こんなにボロボロになって私たちは戦っています。今回は、今回だけは…」

15.他者からの尊敬のほのめかし
  「この商品を身につけていたら、誰もがうらやましがりますよ」

16.他者からの軽蔑のほのめかし
  「そんなことしてたらみんなから嫌われますよ」

 

この中で、1、2、6、などは、公職選挙法に抵触するでしょうが、その他は使える戦略があるのです。

5の友好的態度は立候補するのであれば必須条件です。

握手ができない時代ですので、グータッチをしながらにこやかに話しかけるのは候補者には必要です。

自分のことを嫌っている人の言うことは聞きたくないですよね。

 

ただ、言葉に説得のメッセージを入れるコツは、マーウェルとシュミットによると、12と13の役割関係の強調に勝るものはないということです。

みんな生きている中で「こういう人と同じように見られたい」と考えるものです。

例えば、健康に気遣っている人、意識高い系、型破りなキャラクターなどです。

そこに入っているという意識が芽生えると、人間は少し無理してでも入りたがるのです。

「健康に気遣っている人たちがみんなやっているダイエット法」があるんだったら、飛びつく人が一定数いますね。

その中に入っておきたいからです。

 

さぁ、候補者の皆さん、実際に選挙で使えるフレーズを考えてみましょう。

自分の主張を言葉に反映させましょう。

何を重んじるかが言葉に乗ると役割関係の強調にもつながります。

当選するための必須スキルですので、早いうちに選挙戦の武器にしましょう!