その昔

 

私が駆け出しの研究者だったころ、ある国際

学会で談合について論文を発表したことが

あります。

 

Pacific Asian Communication

Association という学会で、太平洋岸の

国々で隔年で開催されている学会です。

 

あれは確か1998年の夏。

 

初めての学会発表でしたので随分と緊張した

ことを覚えています。

 

足が震えて唇が乾いて、早くステージを降り

たかったですね。

 

国際学会ですので、日本の文化などに興味を

持つ外国の研究者たちがたくさん参加して

いました。

 

そして私が取り扱ったテーマは談合。

 

300年ほど前から続いている日本の悪しき

伝統です。

 

談合とは、元々は順繰りに仕事を回す共存の

意味合いが強かったものの、同時に排他的な

組織が形成されるようになりました。

 

独占禁止法に代表される自由競争の考えが

西洋から紹介された際に、このシステムは

ようやく違法だと考えられ始めました。

 

新しい企業が参入できないのですね。

 

しかし、問題はそれだけではありません。

 

公共工事の指名入札の際には最低制限価格と

いうのがあります。

 

「ちゃんとした仕事をするのに安すぎても

受注する会社は信頼ができない」という

発想のもと、発注先(国や地方自治体)が

調べて価格を事前に決めるのですね。

 

で、受注者側は「この金額でこの仕事を

する!」という価格を提示するのですが、

最低制限価格を下回ると脱落し、上回ると

その分多くの額を払わないといけないの

です。

 

この価格を知るために贈収賄が起こるの

ですね。

 

これも官製談合と呼ばれる問題です。

 

締め出しにも似た排他的な制限、贈収賄の

どちらも談合です。

 

これが今でも起こっているんですね。

 

つい数日も東京府中市の市役所幹部が最低

制限価格を漏洩したというニュースがあり

ました。

 

なんとこの情報を何らかの手段で知った

土木業者が、まったく同じ価格

(54,548,952円)で落札したということ

です。

 

1円単位までの8桁で同じ数字ですので、

偶然ではないのが一発で分かります。

 

で、逮捕されました。

 

バカやね!

 

ただ、これが実に日本っぽいのです。

 

ちゃんとできないのです。

 

いい加減で、なあなあで全てを済まそうと

するんですね。

 

そのいい加減さは言葉にも表れます。

 

日本語が論理的な言語でないのはその証

です。

 

日本語が論理的でない、か...

 

そう言えば、とある大学の面接(大学も

一般企業のように採用の際には面接があり

ます)で、この言葉に対してえらく怒った

教授がいました。

 

その職が欲しかった私ではありましたが、

そこで意見を変えることこそ論理的には説明

できませんのでその主張を続けました。

 

まぁ、結局その大学は落ちたんですけどね。

 

後で聞いた話では「あいつよりも野中さんの

ほうがまともな英語話すよ」と教えてくれ

ました。

 

そんな私は今でも日本語よりも英語のほうが

はるかに論理的な言語だと考えています。

 

論理。

 

今、やたらと論理的思考だのなんだの言わ

れていますね。

 

論理が表に出るのは言葉にした時です。

 

論破されないように説明ができる時です。

 

そう考えると、この国ではもっと大きな

規模で非論理的な事態が起こっています。

 

マスクにしても、持続化給付金の一般社団

法人にしても、みんなが理解できる説明が

欠けています。

 

これで国が回るのが不思議でなりません。

 

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