抽象度を上げる意味
「話が抽象的すぎるから分からないんだ!」と怒る人は具体的に話すよう求めます。
ただ、この抽象的というは実際には曖昧などと同じ意味で使われています。
だから例を示せと言っているのでしょう。
私が言う抽象度を上げるとはこれとは違いまして、具体性ではなく具象性に言及しています。
より高度な表現に変えるという意味です。
例えばこんな二つの文を聞かされたらどう感じるでしょうか?
「英語さえやっておけば何とかなるからとりあえず学んだ方がいい」
「英語は汎用性のある言語のため、学習において最優先順位だ」
意味は同じですが、上の文よりも下の方が賢く聞こえますね。上は確かに具体的でもありませんが、具象度の高い表現なのが賢くない、かつ幼い表現の原因です。具象度が高いとは、見たまんまということでして、動きがたくさんあります。
言わば子どもが使う表現です。
大人ならば抽象度を上げた表現を使えないといけません。
それが下です。
理解しやすくなりましたね。
これは抽象度が上がる段階で曖昧さが減少したためです。
具象度の高い表現とは分かりやすいようで、実は「いい加減」な特徴があります。
「何とかなる」って言われても、受け取る側は幾通りにも勝手に想像できてしまうのですね。
でも、抽象度を上げたら辞書のように、単語の意味をデジタルな感覚で不純物なく理解します。
つまり、単語が指している意味が特定されることで誤差がなくなり、分かりやすくなります。
重要なのは「表現の抽象度を上げる」とは抽象的な表現とイコールではないということです。
具体的な例を抽象度を上げて説明することだってできます。
最悪なのは具象度の高い抽象的な表現です。
文章が苦手な人の共通点の一つです。
残念ながら日本語は具象度の高い表現を好む傾向があります。
だから抽象=悪と考える人が多い。
実はこれが日本人が英語が苦手な理由の一つです。
英語は抽象度が高い表現が多いから、主語や目的語で抽象名詞を使う頻度が高いのですね。
例えば satisfy という単語を学んだとします。
満足させるという意味です。
これを英語として文の中で使おうとしても、多くの場合自分が主語になって "I'm satisfied with ..."だけしか出てきません。
主語を二人称にしたところで"You will be satisfied with..." です。
"Your satisfaction is guaranteed."を使えると英語っぽくなるのですが、日本人にはなかなか出てこない。
もしこうした抽象名詞を日本語で使えるようになったら、つまり日本語で抽象度を上げた表現ができるなら言葉の可能性が何倍にも広がるのです。
パブリックスピーキング道場で多くの子供たちが学んでいる修辞の一つがこの抽象度を上げた表現です。
小6で既に使いこなせるようになっています。
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人生のいかなる場面でも求められる知性溢れる話は言葉に宿ります。
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