パブリックスピーキング
人から信頼される言葉を研究していたのは古代ギリシャ時代の哲学者、アリストテレスに遡ることができます。
私の拙著、プレゼンのレシピに記してあるエトス、ロゴス、パトスの中のエトスの話です。
エトスはEthosと書きまして、信頼性、人柄という意味です。
「この人だったら信じていい」と思われるためには、その人らしさが伝わる言葉を使う必要があります。
それは独自性のある、その人らしさが反映された言葉です。
自分の経験、知識、そして正しい判断が見える、本物である証です。
逆に、胡散臭さが漂う言葉もありますね。
先日、あるオンライン無料ウェビナーに参加してサービスの中身を聞いていました。
必要だったら契約しますが、ほとんどの場合、私はその人の話し方を研究するために聞いています。
ウェビナーって、どれを受けても同じ構成なんですよね。
そしてどの講師も同じような軽い言葉遣いです。
型にはまった言葉と展開だから次に何が言われるか想像ができます。
「これとこれを全部つけて総額150万円のところを、今だけ68万9千円!」
だいたい大幅に値引きしたフリをして70万くらいの商品を売ってきます。
この展開が予想できるのは、彼らの言葉の薄さから、私の頭の中でその人を一定のカテゴリーに入れることができるからです。
私の頭の中で「信じてはいけない人」という範疇があって、それに当てはまるのですね。
そしてなぜこの人たちのイメージが合致するかというと、似たようなコンサルタントから同じ手法を聞いているからなんです。
どれも「客の自己責任」という風に持っていこうとします。
これが見えた瞬間に、偽物だという雰囲気が漂います。
お客さんが「この人を信頼していい」と思わせる言葉とは、偽りのない実績と経験、そして対処能力があることが見える語彙の選択です。
問われた質問に対して、正面から答えていないと、言い訳ばかりになりますからね。
以前ある方がおっしゃっていたのは、「他のセミナー講師は『結果が出るかどうかは〇〇さんの努力次第です』と言っていたが、CSAにはそれがないから信頼できた」ということでした。
確かに私も他の講師たちも決して上記のようなセリフは言いません。
ちなみにロゴス(logos)とパトス(pathos)に関しては別の回でお話しますね。
政治家の言葉
政治家の言葉を見ていても同様の偽りの言葉があります。
彼らが使いたがる表現がいくつもありますね。
・安心安全
・徹底して行う
・きちんとしないといけない
・丁寧に説明する
・しっかり
・万全の態勢で
・前例のない
・大胆に行う
・高い警戒感を持って
フワフワしてつかみどころがない、そして根拠の無いこうした表現が信頼を失わせる要因です。
使えば使うほど信頼度が下がるというのに、官僚であろうゴーストライターが使い続けています。
また、それに気づかない総理大臣には更に大きな責任があります。
おっと!政治家と書いたはずなのに菅総理限定になっていましたね。
言葉を使う訓練をしない日本社会、特に教育の問題でもあります。
流行り言葉を推奨する雰囲気は良くありません。
自分の頭で言葉を作ろうとしないからです。
その例として、自らのいいイメージを伝えるために「寄り添う」や「共感」をやたら使う人が多すぎる。
どちらも表面的な言葉であり、偽善的です。
「弊社のテーマは共感です。お客様に寄り添って、サービスさせて頂きます。」なんて営業担当者が言ったら胡散臭いと思いませんか?
一切勉強してなくても、何も考えてなくても、誰でも使える言葉です。
だから薄いんですね。
寄り添うとはあくまで物理的な接近です。
頭を使おう
みんなが使わない言葉で文章を作るのは、ゼロからイチを作り出す作業です。
頭を使います。
どんな場所でも話すことができるのは、自分の考えを作り出す過程です。
つまり賢く話せるのは賢く考えられるということ。
頭を使って話してないのが見えるのが、実は人から信頼されない最大の理由なのです。
彼らに必要なのは眠っている脳の才能を開花させるための言葉の訓練です。
面接、会議、討論、雑談、商談、全てで使えるトレーニングができるのがパブリックスピーキング道場です。
人前で話すと言うのは「他者との同化」ではなく「個人の存在価値」だからです。
あなたも自分の存在価値を言葉で示してみませんか?