言わなくても分かる?

いえ、言わないと分かりません。

コミュニケーションは言葉が基本です。

非言語はあくまで言語の引き立て役に過ぎません。

その証拠に、非言語だけでは言いたいことの10%も伝えられませんから。

日本には非言語がコミュニケーションの大部分を占めていると誤解している人たちがいます。

大変な勘違いです。

ここにはどうやら二つの理由がありそうです。

メラビアンの法則の誤解

1つは、メラビアン崇拝主義者たちです。

この人の発音は本当はマレイビアンというのですが、言葉の力を信じない人は、発音もちゃんとできません。

彼らは「メラビアンはコミュニケーションの93%は非言語に頼っていると言っている」と主張します。

これが誤解なのですね。

マレイビアンはそんなこと言っていませんで、相反するメッセージの時には非言語に頼ると述べています。

つまり、怒った表情を見せながら「もう怒ってないよ」と言っても、それは非言語を基に判断するため、言葉を信じないということです。

やはりマレイビアン崇拝者は言葉を解釈する能力に欠けているのでしょう。

非言語好きな人たちが非言語を教えたがるもう一つの理由は、そっちの方が教えるのに簡単だってことなんですよ。

だからこっちのほうが重要だと言っているのです。

口角を上げるとか腹の底から声を出すとか、誰でもあっという間にできる内容だから、簡単に教えられるのです。

だからコミュニケーションを学問的に学んでいなくても、経験だけで伝えようとします。

実際、コミュニケーション学ではもうずいぶん前から非言語研究はそこまで話題とはなっていないほど浅い領域です。

歌手になるんだったら発声やら振る舞いが求められるのは分かりますが、一般の人はそんなものよりもはるかに大切な学びがあります。

言葉が重要

一般の人は書いただけでも強いメッセージが伝えられるだけの表現を持たないといけないのです。

でも、それは簡単ではありません。

学校でも書き方は体系的に教えられていません。

この国では。

日本の国語教育では、やはり非言語ばかりが重視されています。

宿題では音読を課され、大きな声ではっきりと心を込めて、などに気を配ることが求められています。

やはり体系的に教えられていません。

私が論理的に簡単に書ける方法を学んだのはアメリカでした。

作文はパーツを組み合わせるかのように簡単に完成します。

だからこそ機械的に文章を作り上げることができます。

プログラミングよりも何倍も論理的な考え方を養うことができます。

それに加えて修辞を学びました。

その場面で最も適した言葉の飾りです。

友達と話すのではなく、人前で話すのならそれなりの硬さが求められます。

結婚式にTシャツで現れたら笑われますよね。

逆にバーベキューパーティーで燕尾服を着てくる人も場違いです。

それは言葉も同じなのですが、私が言っているのは敬語のレベルではありません。

敬語なんてものは常識でして、表面的な非言語と同じレベルに過ぎません。

形だけで、そこに生産性はありません。

敬語やら丁寧さやらは、取り繕っているだけでして、メッセージや自分らしさは全く伝えられないのですね。

メッセージは言わないと分かりません。

それは敬語程度の学びでは対応できませんで、自分の意図を言語化する過程にあります。

自分の考えに最も近い単語を瞬時に見つけ、それを的確に並べるのです。

考える段階ではいい判断力が求められます。

そこにも言語が介在します。

聞くにも、判断するにも、反応するにも全て言葉が大切なのです。

日本はこれを軽視し過ぎています。

論理と修辞と文法の重要性が、いま日本が最も知るべきコミュニケーションの基本です。

それを私は西洋で学びました。

新約聖書の始まりが「初めに言葉ありき」である所以です。

そしてギリシャ語の聖書では、この「言葉」の部分は logos と言います。

論理の語源となった単語です。

論理と修辞と文法を学ぶのでしたらCSAです。

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【筆者紹介】

野中アンディ 
(一般社団法人 コミュニケーションスキル協会 代表理事)

子どもから大人までが参加する、言葉が洗練されるオンライン教室「パブリックスピーキング道場」を主宰。アメリカのリベラルアーツ科目である論理、修辞、文法を日本語に応用し、より独自性と創造性の高い言葉の作り方を指導している。現在は認定講師が各自の道場を持ち、言葉の見える化と映像化をテーマに全国に展開中。エグゼクティブ向けパブリックスピーキング、アスリート向けメディア対応などをプライベートレッスンでも教える。超実践的英会話講座「雑談English」シリーズも好評。企業や学校、PTA等講演多数。福岡県春日市出身。詳細はこちら